『永遠の0』

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)


終戦から60年目の夏、健太郎は特攻で死んだ祖父の生涯を調べていた。
「娘に会うまでは死ねない」
祖父は周囲にそう言っていたという話を聞く。
軍隊にいながら、死にたくないなどということは、
当時ありえないことだった。


パイロットとしての腕はたしかだか、臆病。


祖父を知る方々の証言を聞いていく中で、
ますます謎は深まる。
終戦間近になって、なぜ、あれほど嫌がっていた特攻をしたのか。
明らかになる真実とは。


涙なしには、読むことができませんでした。
展開がわかっていても、なお、胸をうつものがあります。


宮部によって生かされた者たちのストーリーもまた、いいです。


太平洋戦争の中での零戦の位置づけ、
敗戦の原因、
そういったものも含めて楽しめる作品です。
人命軽視の日本の作戦と消耗する軍隊の話は、
現代に通じる部分もあり、
考えさせられました。


“それから宮部小隊長は写真を胸ポケットに仕舞うと、呟くように言いました。
「娘に会うためには、何としても死ねない」
その顔は普段の穏和な彼からは想像もつかないほど恐ろしい顔でした。”