『ファウスト 第二部』

ファウスト〈第二部〉 (岩波文庫)

ファウスト〈第二部〉 (岩波文庫)


グレートヘンの悲劇から立ち直ったファウストは、
美を追究することで、生の意義を把握しようとする。


しかし、ヘーレナを追うことも悲劇に終わった。


美の追究ではなく、
その次に見出した、生の意義に、しびれる。


ついに、悪魔と交わしたあの言葉を発して、
ファウストは倒れる。
「留まれ、お前はいかにも美しい」と。


賭けにかったと思った悪魔が、
ファウストの魂を奪おうとすると、
天使の光がファウストをつつみこむのである。


最後、ファウストが望んだものには、迫力があった。
最後だけは一気に読んで、
感動の美しさに圧倒された。


たしかに年齢に見合った読み方が出来る一冊であり、
一読の価値がある。
世界の見え方が少し変わってくるような気がする。


“そうだ、おれはこの精神に一身をささげる。
知恵の最後の結論はこういうことになる、
自由も生活も、日毎にこれを闘い取ってこそ、
これを享受するに価する人間といえるのだ、と。
従って、ここでは子供も大人も老人も、
危険にとりまかれながら、有為な年月を送るのだ。
おれもそのような群衆をながめ、
自由な土地に自由な民と共に住みたい。
そうなったら、瞬間に向ってこう呼びかけてもよかろう、
留まれ、お前はいかにも美しいと。
この世におけるおれの生涯の痕跡は、
幾千代を経ても滅びはすまい。ー
このような高い幸福を予感しながら、
おれはいま最高の瞬間を味わうのだ。”