『きいろいゾウ』

きいろいゾウ (小学館文庫)

きいろいゾウ (小学館文庫)


いま、このタイミングで、この本に出会ったことは、
奇跡なのかもしれない。


1年前だったらわからない感覚だったかもしれないと思う。


物語は、「ムコさん」と「ツマさん」
という小さな夫婦のおはなし。
田舎にやってきた二人。
ツマは、動物や植物の声が聞こえる不思議な感覚をもっている。
仲良く、楽しく、暮らしているようであったが、
過去と向き合わなければならないことがでてきて・・・。



きいろいゾウの話、いろんな夫婦の物語、
がぐるりぐるりと進んでいく。


結婚したから夫婦になるのではない。
何度も、壊れかかって、再生して、大切なものに気づいて、
夫婦というのはできていくものなのかもしれない。
わかる?ぼくにはやっぱりわからないけどね。


縁側で昼間からビールを飲もう。
ちょっとそこまで散歩をしよう。
海を見に行こう。


そして、満月の夜には、しずかに月を見上げよう。
秘密の話は、しちゃあいけないよ。


“やっぱり、覚えていた。あの日のこと、電車の暖房の音、おっさんのだみ声。あのとき僕たちはとても気弱になっていたけど、もしかしたらものすごく幸せだったのかもしれない。ツマの手が小さいと思ったのは、あのときがはじめてだった。耳たぶの裏にほくろを見つけたのも。そうだ、思い出した。知ってるつもりでいたけど、僕はこれから、まったくの他人と生活をすることになるんだと決意した日だった。”