『ハナミズキ』

ハナミズキ (幻冬舎文庫)

ハナミズキ (幻冬舎文庫)


良子は、ふらりと突然現れたカメラマンの圭一に恋をした。
しかし、娘の紗枝が生まれても、圭一は世界をとびまわり、
若くして亡くなってしまう。


やがて、高校生に成った紗枝もまた、初恋をする。
夢や進路、家庭の環境、さまざまな想いを抱えながら、
その恋はやがて・・・。


後半の展開は、正直、突飛である。
なんというか、それは無茶なというストーリー展開に、開いた口がふさがらない。
心理描写も、ちょっとあっさりしている。


さらさらと流れてしまうのが、ちょっと残念ではある。


それと比べたら、ハナミズキ灯台の変わらない美しさは印象的。
変わらない場所があるというのが、物語に奥行きをもたせているのはいい。


初恋というのは、場所の記憶とともに残るものなのかもしれない、
とふと思った。


“季節は春。庭は一番美しい季節を迎えていた。
ハナミズキはすでに満開で、薄紅色の花を誇らしげに咲かせている。
その花の下に立ちながら、高校生の頃の自分が、今の自分を見たらどう思うだろうとふと思った。海外生活に破れて逃げてきたと思うのだろうか。それとも、今の穏やかな暮らしを認めてくれるだろうか。”