『雄気堂々(上)』

『雄気堂々(上)』(城山三郎 著)


雄気堂々(上) (新潮文庫)

雄気堂々(上) (新潮文庫)


明治の大実業家、渋沢栄一
彼が起こした会社や組織の数は、並大抵のものではない。


彼もまた、幕末を駆け抜けた一人だった。
農民の出でありながら、
一橋家に仕え、
大政奉還を迎えた。


建白魔だったという。
自分で仕事をつくったという。
根底にあったのは、志とともに実を大切にするという判断であった。
志だけでは、ダメだ。


栄一は、苦労しながらも自分の道を模索していた。


慶喜は、また例のような返事をしながら、きいていた。ただ、慶喜の瞳の中には、栄一の姿が大きくはっきりうつっている。(心にくいことをいう男だ)と、慶喜は思った。この若い建白魔がいよいよ気に入った。よく勉強するし、自分で仕事をつくってくる。しかも、軽輩ながら、一橋家の明日の姿を考えてくれている。”