N響 第9

今日は、NHKホールで、
N響の第9を聴いてきました。
http://www.nhkso.or.jp/calendar/concert_day_2010-12-23.shtml


すっごいよかったです。


何となく一度、年末に聴いてみたいなと思ってから
チケットをとったのですが、
その時点で空いている席は高めのもののみ。
高くても、何事も経験だと思って購入しました。


P4列ってあったから、前から4番目くらいかなと思ってたら、
最前列でした 。


指揮者のヘルムート・リリングとの距離、わずかに3メートル。
目と鼻の先であり、ほとんど斜め後方から見えるので
微妙な表情までよくわかる。
歌手の4名にいたっては、その距離1メートル。
近すぎ!!


全体の音のバランスがどうとかいう問題ではなく、
圧倒的な迫力にやられました。


第1楽章にいたっては、落ち着いて聴けず。
ささいな音の振れ、
奏者の強弱のもっていき方、
奏者の指使い、
そしてリリングの指揮。
聴くのではなく、完全に“観る”といった方が正しく、
すっげー体力を使いました。


こんな間近でプロの指揮者をみたことがなかったのですが、
魅せられましたね。
ほとんど猫背で、背を丸めてタクトを繊細に振っていたかと思えば、
曲調に合わせて力強く背筋を伸ばして青年のように大きく表現したり、
心から遊ぶかのように振ったり、
微塵の迷いもなく流れるようにぴたっといくのは爽快ですね。
あたり前のことなんですけど、
リリングの表情、視線の先や口の動き、左手の細かな動き、
すべてに吸い込まれるようでした。


自分も同じステージに上がって、
楽器を演奏しているような感覚にさせる魔術がありました。
鳥肌が立つし、自然と体がリズムを刻むから不思議です。


そんな感じで、
リラックスして聴くどころではなく、
第2楽章以降も音楽と直接ガチで向きあうような感じ。


第1楽章から第3楽章まで、きちんと聴いたことがありませんでしたが、
全体を通して「闇から光へ」「苦悩を経て勝利へ至れ」というメッセージというのは、よくわかりました。
第1楽章から、第3楽章までの流れ、音の遊びをそのまま第4楽章に組み込んでいるのは、おもしろく、クライマックスがより一層、圧倒的。
断片でしか聴いてこなかったので、そんなことさえ新鮮。


4名の歌手の歌声も、人間ってこんな声が出せるのか、
というほど圧倒的。
目と鼻の先でバリバリ響くあんな声をだされたらしびれます。
それを追いかける合唱の迫力もなんとも言えないくらいに心地よい。


大満足でした。


「人はみな兄弟となる」


ベートーヴェンの熱い願いと、
合唱と演奏の融合、迫力、
この曲が年末のこの時期、“希望”として君臨しているのが、
改めてわかった気がします。


帰り道、頭の中でこの曲が流れっぱなしで、
原宿の街をゆく人たちとイルミネーションの輝きが、
いつもとちょっとだけ、違って見えました。