瀬戸内国際芸術祭2010〜豊島・ハーモニカ〜

豊島に、スー・ペドレーさんの“ハーモニカ”という作品があります。
かつて漁師が住んでいた空き家を、巨大な漁網で覆っています。
その家の中にも作品が。

綺麗な布で覆われた食器類。
カラフルさと、多さに心が動かされます。
夏の日差しを浴びて、輝く布。

いろんな角度から写真を撮っていると、
受付の方がいろいろと話をしてくれました。

ここにある食器は、昔この家で使われていたものであり、
覆っている布は、この家にあった着物からできたもの。
並べられた器は、豊島の形をしており、器の高さで島の高低も表現しているとのこと。


知れば知るほど、奥が深くなっていきます。

そうか、昔ここに息づいいていたものが、
いまもこうしてあるのか、と。

じーんとしていたところで、ひとこと。

「ところで、この作品の名前知っていますか?
ハーモニカっていうんですよ。この家のどこかにハーモニカあるんですけど、探しましたか?」

と。


知りませんでした。
危うく、知らぬまま立ち去るところでした。


会話が鍵となって、さらに作品の奥深くへ。


戸棚も自由に開けていいというので、あちこち探します。
古い服、
古いお菓子の入れ物、
裁縫道具、
いろいろなものが出てきます。

日の目をみることなく、そっと民家に眠っていたものが、
こんなものもあったのか、
とあたたかい気持ちにさせてくれます。

探索に熱中してきた頃、ハーモニカが見つかりました。

その音色、なんともいえません。



僕がこの作品を後にして、歩いていると、
ハーモニカの音が聞こえてきました。

あ、僕の後でもハーモニカ、探した人がいるんだな。
それがまた、うれしくなる作品で、
コミュニケーションをきっかけに作品理解が深まるのがいいなぁと思ったのでした。


豊島の作品は、民家の中に、自然に溶け込んでいて素敵です。
古さや記憶を、現代アートにのせて、気持よく届けてくれる、
そんなものが多かったです。

ということで、今回行った、直島と犬島より、豊島の作品が好きなのです。