『沈まぬ太陽(五)』

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈5〉会長室篇(下) (新潮文庫)

  

首相から三顧の礼をもって迎えられた国見であったが、
王道をゆく彼の道は険しいものであった。


利権をめぐる複雑に絡み合った構造の前に、
なす術がない。
問題が明るみにでそうになればなるほど、政治の力は大きくなり・・・。


何というか、救われない思いであった。
大きな力の前に屈しず、筋を通すということが、これほどまでに大変で、むごいことなのか。


“「契約に従い、これまで通り三十六億六千万ドルについては予約を履行することとして、そこで購入したドルを、償却資産である航空機の支払いに当て、為替差損の長期分散化を図ることに決定しました。」
「つまり航空機の支払いに為替差損を上乗せするわけか」
呆れて聞き返すと、
「会計処理上、問題ありません、むしろそうすることによって、損失を表に出さずに済み、誰の責任も問われずに済みます」
永尾は、しれっと官僚答弁をした。”